「ラブ・パレード30」

<4月の独白T>






俺は知っている。
人間は平等だなんて、そんなこと嘘だということを。







ラブ・パレード30




俺は知っている。
人間は平等だなんて、そんなことは嘘だということを。


俺は知っている。
だけれどひとつだけ平等なものがあるということを。
俺たちはそれからは逃れられない。
そうしてそれは日常の隣に潜んでいる。


俺は知っている。
それは本当に平等で、残酷なほどに平等で。
あっけないほど簡単に訪れる。


お前だって知っているはずなんだ。
その平等が訪れた瞬間に、お前は立ち会ったのだから。

それなのにどうしてお前はそんなことを言えるんだ。
それはきっと、彼女にだって訪れる。
それはひどく平等なものだから。


どんなに強くても。どんなに愛おしくても。


なあ、だから言ったろう?吾郎。
今更後悔しても遅い。


「吾郎。いいか、落ち着いて聞け」



…なあ、だから言ったろう、吾郎。
彼女にだって訪れるんだ。


お前の気持ちはわかる。
お前の強さもわかっている。
だが…その手を離したのはお前だ。


―きっとすぐに忘れると思う。

お前は言った。

―子供の勘違いやったってすぐに気づく。
こんな勘違いにつけこむ程、俺は阿呆やないで。

大切だとお前は言った。

多分、何より大事や。大切なんや。
せやから俺は後悔なんてせえへん。
あいつの未来を邪魔するようなことはせえへん。
あいつはまだ16で。
これからたくさんのものに出会っていく。
だから、俺は…。


本当にそうか、吾郎。
俺は…俺たちは知っている。


……知っていたはずなのに。


「死」は、「死」というものだけは「平等」だということを。





「…吾郎、希望ちゃんが…」








それは4月の、はじめの話。














4月の独白T








「ラブ・パレード31」へつづく





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