「或る若社長の花嫁」続編

或る女性の目から見た風景






ええと、こんにちは。
高宮梨子と申します。
はい。どうぞリコとお呼び下さい。

え?本名?名前は「なしこ」っていいます。
ふふ。変な名前ですよねえ。言いにくいし。
でも自分では気に入ってるんですよ。

あ、はい。
椿さんですか?もちろん知っていますよ。
桜井さんの好きな人のことです。
ええと、桜井さんっていうのは私のお友達の男の人で、すごくお金持ちの方です。
大きな会社の若社長さんなんですよ。
でもちっとも怖い雰囲気なんてなくて、とても丁寧な口調の優しい方です。

椿さんは、その桜井さんが結婚したいって想い続けているひとです。
なんでも桜井さんが小さな頃に一目ぼれしたそうなんですよ
はあ…素敵ですよねえ…。
あれ?でもそれじゃあ計算が合わないような…?
あ、で、でもですね!
さ、桜井さんが椿さんのことを大切にしてるっていうのは本当なんですよ。


椿さんは凄く可愛らしい女の子です。
え?年齢?
私の目には5歳か6歳か…それくらいに見えます。
黒い肩までの髪に、いつも椿の花をさしてます。着ているものは着物ですね。
赤い帯に淡い色の着物がお好きみたいです。
それがまた、凄く似合っていて可愛いんですよ。


え?それじゃあ桜井さんはロリコンじゃないかって?
そ、そんなことないです。
いや…ええと、そうなるのかな?
い、いいえ!人に恋する心に年の差なんて関係ないってわたしは思います。
それに…椿さんって凄く大人びていますし。

そうなんです。
椿さんって外見のわりに凄く凄くおとなっぽいんです。
23歳のわたしよりずっとしっかりしているような…。
ううん。絶対しっかりしています。
口調のせいかなあって最初は思っていたんですけど、どうもそれだけではないように思えます。
なんだか時々お母さんとか、お姉さんとお話しているような気分になるんですよ。
ふふ。おかしいですよね。


椿さんに初めてあったときに、わたし、謝られたんです。
正美が迷惑をかけてすまないって。
ええと、あることでわたしと桜井さんは知り合ったんですけど、そのときの出来事のことで謝ってくださって…。
別に桜井さんが悪いわけじゃなかったんですけど…。
あ、もちろん椿さんもですよ。

でも、そのときの椿さんはまるで桜井さんのお母さん…ううん、奥さんのようでした。
桜井さんのことをよくわかっているんだなあって。
大切にしているんだなあって…凄く嬉しくなっちゃいました。

でも、椿さんは桜井さんが来るたびに帰れって言うんですよね…。
どうしてでしょう。
帰れ。
もう二度と来るなって…。
凄く凄く悲しそうなお顔で言うんです。
桜井さんのことが嫌いなわけではないと思うんです。
だって、それならあんなに悲しそうなお顔はしないでしょう…?




え?椿さんのことが見えるかですって?
もちろん見えますよ?
??
え?どうしてそんなこと……。
すみません、何をおっしゃりたいのかわたしには…。
え?もういい?
は、はい…。それならいいんですけど…。


あ、このバスケットの中身ですか?
今日はサンドイッチを作ってきました。
椿さんのリクエストなんです。
ええと、苺のジャムを手作りしてみたのでそれをはさんだものと、優次君が好きだっていっていたたまごサンド。
あとは、シーチキンときゅうりをマヨネーズであえたツナサンドを…って、きゃ!い、いきなりどうしたんですか?
お、お顔が近いです。あ、あの…。
え?ええ、たくさん作ってきたのでぜひとも食べてください。
はあーびっくりした。
ツナサンドがお好きなんですか?
え?違う?シーチキンが?


ふふ。
ああ、ごめんなさい。
だって、凄く格好いいのになんだか意外で…。
はい。じゃあまた来る時に作ってきますね。


ああ、もうおうちに着いちゃいましたね。
今日はね、椿さんと優次君と一緒にトランプをする予定なんです。


え?
はい。もちろんです。
わたしは桜井さんを応援しています。
六尾さんは椿さんのことを心配していらっしゃるんですね。
はい。
頑張りましょうね。
おふたりが幸せになれたらわたしも凄く嬉しいです。


ああ、足音が近づいてきました。
これは椿さんかな?

うふふ。
わたしと六尾さんが一緒に居るところを見たらきっとびっくりなさるでしょうね。




……。
………。




あっ!こんにちは、椿さん!











2009・8・26










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